小さいおっさんはうちにいる

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「お父さん、もうどこにも行かないで!」  そう言って、お母さんはおっさんに抱きついた。  ……ん? 抱きついた……? 「お、おっさん……おっきくなってる……? おっきくなってるよ!」 「え? ああっ、本当だ!」 「いやいや、自分で気づかないっておかしいでしょ!」  目の前にいるおっさんは、普通の人間サイズになっていた。  ホントいつの間に……アンタは一寸法師ですかっての。  記憶が打ち出の小槌ってトコ?  それにしてもズルいよぉ、大きくなるとこ見たかったのに!  何かスーツまで一緒に大きくなってるし。突っ込み所満載だよ! 「美登里さん、未理ちゃん。今まで本当にごめんよ。これからはみんなずっと一緒だよ」  本当に大丈夫かなぁ?   ちゃんと社会復帰してくれないと困るからね?  そんなおっさんを少し疑心暗鬼で見るあたし。  でも、とりあえず…… 「お帰りなさい、お父さん!」  そう言って、あたしもお母さんの上からおっさん……いや、お父さんにぎゅっと抱きついた。  お父さんがいなくなってから、十二年が経っていたなんて。  そして、大好きな小さいおっさんが、あたしの本当のお父さんだったなんて。  ようやく我が家にも、平凡だけど幸せな日々が訪れようとしていた。  そう、これは我が家に起こった永遠にミステリーな出来事――  ~終~
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