小さいおっさんはうちにいる

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「思い出した……思い出したよ! 僕の名前は吉野修(よしのおさむ)だ! 十二年前に借金を抱えて、君達に迷惑を掛けたくなくて、そしてこっそりとひとり家を出だんだ」  確かに、昔ヤクザみたいな奴らから取り立てを受けていたと、お母さんから聞いた覚えはある。  でも、借金したのはあのDV親父だと思ってたんだけど? 「でも結局ヤクザに捕まってね。ぐるぐるに縛られた揚句に、足にはブロックの重石を付けられて、そしてそのまま東京湾に沈められたんだよねぇ」 「へー……て、おいおい! 何て恐ろしい話を平然と話してんのよ、おっさん! それって殺人事件だよ!」  あたしは激しく突っ込んだ。 いや、当たり前でしょ! 「そうだったのね、そんなことがあったの。それで借金取りも来なくなったのね……」 「や、ちょっとちょっと、お母さんも! 何を思いっきり納得した顔して頷いちゃったりしてんの!?」  似たもの夫婦っていうんですかね、こういうの。 「でも、苦しくてもうダメだと思っていたら、突然体が縮んで……気が付くとここにいた。記憶を全て無くした状態でね」 「だってここは、私達家族が昔暮らしていた思い出のアパートなんだもの。だからまた、私は未理とここへ戻ってきたのよ」  何と言うかもう、あまりの出来事に開いた口が塞がらない。  まあ……とりあえずあれだよ。まとめてみよう。  DV親父はあたしの本当のお父さんじゃない。  本当のお父さんは、この小さいおっさん。  そしてもう借金も無い。  だったらもう万事解決ってやつ? 万々歳じゃん!  ……半分ヤケクソになってるけどね。
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