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「良かったな春樹。うまいもんだ」
「どうしよう、このクマ。……お店の人に返そうか」
「なんでだ? もったいない」
「だって、これ抱いて尾行なんて」
「問題無い」
「……そう?」
春樹は諦めたようにそれを両手で抱えると、再びさり気なくターゲットの鈴木に視線を流した。
薫はその時になってようやく小さな疑問を頭の隅に感じた。
……この少年は買い物の途中だったはずだ。せっかくの休日になんだって俺の尾行に素直に付き合うんだろう。
ただ従順なこいつの性格のせいか?……
そんなことを思っていると、目の端で中年の二人がふらりと動いた。
「薫さん」
「ああ、行こう」
のんびり顔の黄色いクマを抱いた春樹が小さく頷いて、薫のあとに続いた。
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