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美沙が困惑した風に視線を泳がすと、立花聡はまた何食わぬ顔で立ち上がった。
「じゃあ、僕はこれで。春樹君によろしく。それから薫には真面目にやるように時々ハッパ掛けてやってくれると有り難いな。忙しいのに、お邪魔してすまなかった」
立花聡は空になった紙コップをゴミ箱にそっと落とすと、小さく笑って事務所を出ていった。
立花聡と、立花薫。外見も中身も一見正反対だが、どこか同じものを感じる。
2人とも、ついうっかり、悪気無しに余計な事を言ってしまう男なのだ。
美沙は何となく可笑しくなって、一人クスクスと笑った。
それにしても。
薫がこの事務所に遊びに来る目的は、春樹だったんだ……。
なるほどね。
美沙は妙に納得し、別段驚くこともなく、すぐにまた仕事モードに頭を切り替えた。
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