第1章 喉を潤す茨

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「今日、暇ですか?」  「ああ?まあ、暇だけどよ。」  友也の答えにニコッと目を細めて笑った侑馬は、嬉しそうに両手を合わせる。  「じゃあ、僕の家に来ませんか?是非ご招待したいと思いまして。」  「いいのか!?」  「もちろんですよ。」  満面の天使の笑みの侑馬と、コンクリートの道をずっと歩いていたのだが、急に辺りはジミジミしだし、奇妙な音や声が聞こえてくる。  だが、友也の前を歩いている侑馬はサッサッ、と歩調を緩める事もなく歩き続けている。  声をかけようとしたが、ガサガサッ、と何処からか聞こえてきた音に顔は自然と引き攣り、出来るだけ侑馬から離れないようにして着いていく。  辺りを気にしながら歩いていると、友也の目の前にコウモリが飛んできた。  「うわあぁぁあぁ!?」  手を振ってコウモリを振り払おうとするが、コウモリは羽根をバタバタさせて友也を威嚇し、なかなか離れようとしない。  侑馬に助けを求めようとした友也だが、すでに侑馬はいなくなっていた。  仕方なく駆け足で森の奥へと進むと、いきなり顔面に逆様の顔が現れた。  「~~~ッ!!?☆●×□!?」  言葉にならない叫びをすると、逆様の顔はプッと吹き出し、しまいには大声で笑いはじめた。  「と、都賀崎!?じゃ、ない・・・。」  くるり、と枝に引っ掛けていた足を外し、地面に静かに下りてくると、目は赤く充血し黒に覆われた小さな牙を持っているシャルルが嘲笑う。  「貴様は実に学習能力が無いな。馬鹿を通り越して成す術が無い。」  「なっ!?」  ニヤリ、と笑うと踵を返して茨に抱かれた城に入っていく。  来た道を戻ろうとした友也だが、来た道はすでに暗闇に包まれ、森の中からは不気味な鳴き声や瞳が狙っている。  「帰ってもいいのだぞ。帰れるのなら、だがな。」  そう言ってまたニヤッ、と笑うシャルルに苛立った友也だが、大人しく城の中へと入ることにした。  中に入っても気味悪く、薄明かりしか無いためか視界は狭く、臭いも生臭い。  「さっさと座れ。鈍間が。」  拳を作りながらもグッと堪えていると、先日見たコウモリが二匹シャルルの近くに止まって友也を睨む。  「早速だが、貴様にはあの女共を黙らせてもらう。」
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