第1章 喉を潤す茨

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登場人物                        都賀崎 侑馬 (グラドム・シャルル)                        石黒 友也                        大柴 光 (リカント・ヴェアル)                        ロイヤス・ミシェル                        ミラー                        シレーヌ・テノ―パル                        ガウラ・ファウスト とにかくね、生きているのだからインチキをやっているのに違いないのさ。 太宰治 全てを擲ってまで守るものなど、この世に存在するだろうか。  もしあるとしたら、それは本当に守るだけの価値があるのだろうか。  闇夜の生き血を啜り、薔薇色のワインを呑み干し、宵闇とともに堕ち、錆びた朝を唄い、狂楽に踊りだす。  貴方の愛に齧り付き、骨の髄まで噛みついたら、一番美しい表情を見せる。  満月、三日月、新月、いつの夜でも姿を見せるその姿は、まさしく蝙蝠。  ただ蝙蝠と違うのは、その姿は妖艶に口元を歪めて笑い、二足歩行することが出来、蝙蝠よりも性質が悪いということだ。  誰もその存在を認めないまま、時代は進み続けて行く。  だが、時代が認めなくとも、存在が確実であり、進化しているのもまた、今から知る事実となり、現実離れした現実となる。  月がその身を隠し始め、太陽がその存在を消す為に、神々しく光を放ち始める時間。  森の奥、霧の道を通り抜けてさらに奥へと歩みを進めて行くと、そこに、薄らと姿を現したのは、茨に呑みこまれそうな城。  蝙蝠が城へと向かって飛び、とある小窓から部屋の中へと入っていく。  その部屋は、埃を被り蜘蛛の巣もはっている、錆び付いた豪華なシャンデリアがあり、大きな額縁の中には、この城の持ち主だろうか、こちらもすでに色褪せた肖像画が飾られていた。  背もたれの長い椅子に座り、足を組んで優雅にワインを呑んでいる男が一人。  「胃もたれしそうだ。」  ワインを横の小さいテーブルに置くと、組んでいた足を下ろして華麗に立ち上がる。  「人間相手は疲れるが、極上の血を手に入れるためだ。背に腹は変えられねぇしな。」
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