第1章 喉を潤す茨

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ぽっころぽっこり・・・・・・  なんとも珍しい目覚ましによって起こされた脳は、身体に司令を出し始め、やっと足や手が動き始めた。  朝食は食べずにトマトジュースだけを口にし、学校へと歩いていく。  「都賀崎くん!おはよう!」  「ああ、おはよう。」  少年がにっこりと目を細めて笑って返事を返せば、同じ学校の女生徒たちはキャーキャーと騒ぎながら走っていく。  薄い青のような、少し白が交じったような銀髪の癖っ毛で、見るからに美少年。  成績優秀で、少しひ弱そうなところも、女生徒から人気が高い理由なのだと、以前誰かに言われた気がするが、本人は気にしていない。  背筋を伸ばして歩いていると、後ろから暑苦しい影が近づいてきた。  「よぉ。相変わらずの人気ぶりだなぁ?都賀崎侑馬くんよぉ~?」  「おはようございます。石黒友也くん。君も相変わらず喧嘩っ早いですね。」  ニコニコと笑って言葉を返す侑馬に、友也は眉間にシワを寄せ、頬を引き攣らせながら笑い返す。  ツンツンたたせた黒髪の友也は、なんでも力任せの男だが、暴走族や不良は嫌いだと豪語しているが、見た目は友也も十分に不良だ。  侑馬が自分の席に座ると、一斉に周りに女生徒達が集まってくる。  好きな食べ物は何か、嫌いな食べ物は何か、よく見るテレビは何か、スポーツは何をするのか、休日は家で何をしているのかなど、正直どうでもいい事ばかりだ。  だが、侑馬は微笑みながら、一つ一つの質問に丁寧に答えて行く。  「よく飽きないよな、都賀崎も。」  友也の背後から声をかけたのは、同じクラスの大柴光。  光も喧嘩っ早く、よく友也と衝突もするのだが、侑馬の事に関しては、これほど意見が一致する二人はいないだろう。  茶色の髪はサラッとしていて短く、目にもかからない程度に整えてある。  チャイムが鳴って授業が始まれば、女生徒たちは渋々自分の席へと戻って行き、自分の席から侑馬を眺める。
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