第1章 喉を潤す茨

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中に入っていくと、所々にシミの出来た赤い絨毯がひかれていて、天井には落ちてきそうなシャンデリアがあった。  友也と光が中に入ると、扉は重さでバタンッ、と勢いよく閉まる。  ゆっくりと歩を進めて行こうとすると、どこからか、バサバサ、と鳥か何かが飛び交う音が聞こえてきた。  そして、コツン、コツン、と友也でも光でもない足音が響き、階段の上から誰かが下りてくるのが分かった。  ボウッ、とシャンデリアに小さな灯りが灯ると、蜘蛛の巣が張っていたことに気付く。  足から徐々に見え始めた姿は、階段の中盤ほどの、古びた肖像画が飾ってある場所で足音を止めると、豪華な錆びた手摺に腰を下ろした。  足を組んだのも見えて、その身体を纏ってるものが、黒の靴、黒のズボン、黒のマント、黒の上着と、黒づくしであった。  「お、おい!ここに、都賀崎っていう男が来なかったか?」  「・・・・・・都賀崎?」  「おお!俺より背は小さくて、頭は良いけど、結構優男なんだよな。女にも人気でよ、調子乗ってんだぜ、あいつ。化けの皮剥がしてやろうと思ってよ!」  「ほぅ・・・。興味深いな。」  男は頬杖をつき、喉を鳴らして笑うと、もう片方の手でパチンッ、と指を鳴らした。  小さな豆電球くらいしか無かった灯りは、徐々に大きくなっていき、男の顔もはっきりと見え始めた。  スラッと伸びた足に腕、色白の肌に赤く染まった瞳、妖艶に弧を描き、少し癖のついた髪の毛は銀色に光り輝いていた。  その男の顔がはっきりと見えると、友也は口を開けて呆然とする。  男の風貌は、明らかに自分が先程まで追いかけていた相手なのだが、話し方や表情は丸っきり別人で、同一人物だとは思えなかったからだ。  友也の表情から何もかもを理解したような男は、ククク、と喉を鳴らして笑うと、友也の隣にいる光に声をかける。  「ヴェアル!お前も悪乗りし過ぎだ。見ろ、こいつ、思考停止状態になってるだろうが。」  ふと、友也は自分の隣にいる光に視線を向けると、姿は光のままなのだが、肩にフクロウを乗せていた。  
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