迷子の時間

2/2
前へ
/2ページ
次へ
少しむかしの話をしよう。 僕たちは二人きりの姉弟だ。 僕は小学一年生。 B型の僕は世間一般の例に漏れずマイペース。 僕のお姉ちゃんは中学一年生。 A型のお姉ちゃんは世間一般の例に漏れず几帳面でしっかりものだ。 お母さんが働いていた事もあり、僕の面倒はお姉ちゃんが見てくれている。もう一人のお母さんだ。 あるとき、お姉ちゃんと僕で、家から10キロくらい離れた駅前にバスで買い物に行った。 ふとした瞬間、お姉ちゃんから目を離して、僕は普通に迷子になった。 いくら探してもお姉ちゃんが見つからない。 お金もない。 僕の頭の中には選択肢がいくつかあった。 その1 誰かに助けを求める。 その2 交番に行く。 その3 うずくまって泣く。 その4 とりあえず、歩いて帰還を試みる。 もちろん僕は迷わず、その4を選ぶ。 その1から3は、人見知りの僕にはハードルが高すぎる。 さあ、家に向かって10キロの旅が始まった。 その頃、中学生に上がったばかりのお姉ちゃんは、完全にパニックになっていた。 それはそうだ。小学一年生の弟が消えて頼れる大人もいない。スマホなんてない時代。 交番に行っても、辺りを探しても見つからない。 まさに誘拐か神隠しレベルで、消えました。 一方僕は、なつかしき我が家への帰還の最中。 出発して2キロ地点。正直、歩くのが面倒くさくなった。お姉ちゃんのまねをし、算数を勉強しているふりをしていたので、計算してみる。 2キロは、10キロの5つぶん多い。 今、40分かかったから。 10キロは200分だから、あと3時間20分だ! すでに40分歩いているので、あと2時間40分だけど、それは誤差範囲だと今でも僕は思う。 長旅に違いはない。全く持って面倒くさい。 その頃、お姉ちゃんは家と警察に連絡して、捜索が始まっていた。 かなりの大ごとだ。 確かに小学一年生が10キロ離れた家に向かっているという発想は普通浮かばない。 その上、僕は裏道を通り旅していたので、見つけるのは警察でも難しい。 2時間40分後、僕は無事帰還! お母さんが警察に電話中。すごく謝っていた。 お姉ちゃんは、警察から帰還中。すごく泣いてた。 僕は、疲れたので爆睡中。次は小銭を装備して、バスで帰る選択肢を残しておこう。 しかし、その半年後、今度は東京旅行で迷子に...。人見知りを治すか。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加