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うん、頸動脈をやると現場が派手になるから僕はあまりやらない。じゃなくて。本気で嫌そうな顔をしなくてもいいじゃないか、ちょっと混乱してただけです。
「なんでまたそんな、妄想を?」
「君が運命の人だからよ」
そういえばそんな事を言われた気がする。
廊下の角でぶつかって、なんて現実にありえるシチュエーションなのかは定かじゃないけど、偶然にしては出来すぎた出会いだったんだろう。できれば、出会いたくなかったというのが僕の本心だ。
僕が黙っている分だけ、お茶が冷めていく。先輩も口をつける様子がない。
先輩の言う"運命の人"というのは、ただの恋愛面においての運命だけではない。むしろそれは他にいて、僕はきっとそれを断ち切る役目の方が強いだろう。
「君しかいないのよ」
「先輩を殺せるのが?」
さらさらと流れる髪の毛が、先輩の動きに合わせて揺れる。暗闇に溶けてしまいそうで、そうならない存在感。
「私を愛してくれるのが、よ」
おかしな事を言う。
殺してくれとさんざん言ってきたのは先輩なのに。
僕には、それしかできないのに。
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