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ごつん。
と、僕の頭に拳が落ちた音は近くの席で勉強していた他の生徒にまで聞こえたようだったけど、同時にポキポキッと先輩の指の骨が折れた音は僕にしか聞こえていないようだった。
こわい、こわすぎる。
「待ってたのに、私……ずっと待ってたのに……」
「その台詞もなかなかにホラーですよ、先輩。いや、イヤホン持ったまましゃがまないでくださいよ、引っ張られる……」
ガタガタと椅子を鳴らして他の生徒に白い目を向けられているのを感じつつ、僕は先輩のそばで膝をついた。テーブルの下で先輩はイヤホンを持ったまま、折れた指をパキパキと治している。
「どうしたんですか、待ってたって誰をです?」
細い髪の毛が束を作らずにさらさらと揺れる。僕の問いに答えなかった先輩は、パッと顔をあげると、治ったばかりの手も使って僕の顔を固定し、キスをした。
少しだけ冷たくて、なのにマシュマロよりもやわらかい唇が、僕の口をふさぐ。
二秒くらい、経ったか。そっと離れた先輩は、今までくっついていた唇をツンと尖らせると頬を膨らませた。
「君を待っていたに、決まっているでしょう?」
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