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ふわりと鼻孔をくすぐるのは、あまいお茶のかおりだ。真夏だというのに湯気のたつ温かな飲み物が、目の前に置かれた二つのカップにそそがれていく。
「お茶菓子もあるのよ」
普通なら図書室は飲食物の持ち込みは禁止だ。だけどここは、そんな事を取り締まる者もいなければ、用があって立ち入る人間もいない。僕ら以外で立ち入る人が現れるのは、役目を終えて朽ち果てるのを待つばかりと、白く燃え尽きた知識の入れ物が新しくこの場に迎え入れられる時だけ。
はじめて手に取って期待に胸を膨らませ、夢中でめくったページもあるだろう。夜、寝る間を惜しんで物語の先へ先へと夢を見せたページもあるだろう。必要な資料を探し出し、端に折り目をつけられたページもあるだろう。
そんな本たちが破れ、擦りきれ、ほつれ、変色し、変形し、興味を持つ者がいなくなり、新たな知識に居場所を奪われて、行き着く先がここ。
とある高校の大きな図書室の奥の奥。
誰も知らないもうひとつの図書室。
第二図書室、通称……。
本の、墓場だ。
「一週間前に用意した物だけど」
「カビ、はえてますって、絶対」
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