表の図書室、裏の図書室

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先輩は「冗談よ」と言ってあまい香りのたつお茶のカップをひとつ、僕の方へ寄越した。 「これは今日持ってきたの」 「……もしかして、毎日来てたんですか?」 カパ、と金物の箱の蓋をあける先輩に、僕はカップに口をつける前に問う。すると先輩は金物だけど意外と薄いお菓子の蓋を両手で持って前後に振りながら「大変だったんだからね」とわめいた。どうでもいいけど、振られる度に蓋がぐわんぐわんと音を立てて暗い室内に音が反響していく。 「どうかしました?」 僕がさらに問いかけて振るのをやめさせても、しばらく部屋の奥でわんわん……と音が鳴り続いていた。 「昨日、司書の先生がね、本の束を置きに来たのよ」 ああ、滅多に入る事がない空間にとうとう来たかぁ。と先輩に同情する。 「ひとりでテーブルとイスと、ライトスタンド片付けるの大変だったんだからぁ」 「えー……スタンドは、すみませんでした」 一応電気の配線はあるけど使われていない部屋に電気が通っているはずもなく、この空間を気に入っている先輩が暗闇の中で読書するものだから、僕が電池式のスタンドを持ち込んだんだ。 テーブルセットははじめからあった。
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