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ていうか、先輩が持ち込んだものだ。いったいどうやって持ってきたのかは謎だが、深くは追求しない。
僕はやっとカップに口をつけた。お茶のかおりは確かにするのに、濃厚なあまさを感じる不思議なお茶だった。
「で、こうしていつも通りお茶をしてるという事は、司書の先生には見付からずに済んだんですね」
「そうよ。あそこの本の山の影に、テーブルセットを押し込んで私も隠れたの」
先輩が暗闇の一点をさっき折れて治した細い指で指し示す。そこには地面に接する部分はダンボールに入っているけど、その上には何十冊という数の書籍が積み上がっている一角がある。
司書の先生にしろ誰にしても、好んでこの部屋に入るのは先輩くらいのものだから、奥までは誰も来ない。
「改めて、お疲れさまでした」
労ってみると先輩は鼻を高くし「私のおかげでこうしてお茶が飲めるのよ」言い出したけど、スルーさせてもらう。
やっぱり明るい場所で穏やかな気持ちでお茶を飲んだ方がおいしいに決まっているからである。
「で、どうして先輩は毎日来てるんですか?」
カップを置くと、先輩が再び口を尖らせた。さっきのキスが脳内でリプレイされる。
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