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「ねえ、かれんちゃん。今日は何があったの?」
おかあさんがそう話しかけてきました。かれんちゃんが見上げるとそのおかあさんの顔は半分くらいがひかっていて、見えませんでした。しずみかけたお日さまにてらされたいるのです。
でも、その声はやさしくて、幼稚園からずっと何もしゃべらないかれんちゃんにおこっているわけではありませんでした。だからかれんちゃんは、すこしかんがえてから口をひらきました。
「ゆーくんがね、げーした。それでね、よう子せんせい・・・あたらしいタンニンのせんせいね。」
「しってるよ。よう子先生が?」
「よう子せんせいちょっとおこった。」
「あらー困ったわね。」
「そうなの。こまったわのよ。」
あははははと、おかあさんがわらいました。かれんちゃんはおかあさんがなんで笑ったのかよくわかりませんでした。
「あとは?」
「かほちゃんはおだんご作りのせんせいなの。どろなのにまるくて白いの。かれんちゃんもおしえてもらったんだけどね、できなかったの。かほちゃんはすごい。」
「大丈夫だよ。かれんちゃんも大きくなったらできる。」
「そーかな。」
「そうだよ。」
大きくなるってすごいことだとかれんちゃんは思いました。こんどのたなばたのおねがいは、はやく大人になりたい、と書こうとも思いました。
だけどそのためにはあしたも幼稚園にいかなくてはなりません。今日は、かようびなのです。
かれんちゃんはまた、はなしはじめました。
「えまちゃんがね、あたらしいスカートをきてきたの。ピンクでお花とひらひらがついているの。」
「うん。」
おかあさんはかれんちゃんが下を向いているのに気づいているみたいでした。
「それでね、えまちゃんと、お姫さまごっこしたらね。」
「うん。」
「えまちゃんが、えまちゃんがスカートだからお姫さまで、かれんちゃんはズボンだから王子さまだっていったの。」
「かれんちゃんはそれからどうしたの?」
「お姫さまがよかった。」
「王子さまも、ステキだと思わない?」
「思わないよ!」
かれんちゃんがおおきな声を出したので、おかあさんはびっくりしたみたいでした。
目からなみだが出てきました。
「それでね、かれんちゃんはえまちゃんのスカートきらいっていっちゃって、」
「うん。」
「えまちゃん泣いた。」
「そっか。」
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