夕日

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 もういい。私が恵真にあやまれば済むことだ。そして恵真にもごめんなさいを言わせよう。別に恵真に負けたわけじゃない。ただ部内にいざこざがあれば、問題の解決にもつながらないからだ。  行こう。  そう思った瞬間、私はすでにいつも帰る道へと走っていた。  恵真は1人で歩いていた。その少し後ろには他のバレー部員たちが不安そうに恵真を見ながら歩いていた。  その集団の1人に声をかける。 「ちょっと。」 「あ。」 果歩は私をびっくりした顔で見つめた。まさか私が来るなど思わなかったのだろう。 「どうしたの。」 「私についてきて。それで恵真が暴走したら止めて。」 「・・・何をするつもりなの。」 「仲直り。」  恵真が立ちどまって振り向いた。聞こえてたのか。みんなが息をのむ。  私は恵真の前に進んでいった。果歩も横からついてくる。 「あやまれ。恵真。」  恵真の形のいい眉がつりあがった。切れ長の目に鋭い光が宿る。 「・・・は?」 「いやぁ。香蓮、暴走しないで。」  その場が一気にヒートアップした。いけない。落ち着かなきゃ。 「ごめんなさい。恵真も、部活のこと一生懸命考えたんだよね。わかってたけど、やっぱりあれは、おかしいと思う。一回仲直りして。それからみんなで話し合おう?」  夕日が小さくなる。  恵真はまだ何も言わない。  でも表情は少し柔らかくなった気がする。 「しってる?喧嘩したときはね、お日さまが沈む前にあやまらなきゃいけないんだよ?だから恵真も謝って。」  恵真は何か言いたげな顔をした。でも謝りたいって顔じゃない。何か意見したいって顔だ。  もうすぐ夜になってしまう。 「果歩ぉ。どうにかしてぇ。」 「えぇ!」  果歩の大声。でも果歩はさすがだった。 「・・・えと、恵真のこと慰めてあげられなくてごめんなさい。さっきのことね?私も賛成派だったのに。」  そうだった。果歩は賛成派だったっけ。 「それから。」  彼女は私のほうも見る。 「香蓮の意見も立派だったよ。こんどちゃんと話し合おう。」 「うん!果歩も今すごく立派!ほめてあげる!」 「香蓮に褒められても。」 それに続いてみんなも口を開いた。 「香蓮、ごメンね。」「恵真ちゃん、反対してごめんなさい。」「賛成派のみんなと恵真と先生。いろいろむちゃくちゃ言ってごめんなさい。」  みんな夕日に向かって叫んでいる。青春だ。  
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