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「彼と別れるだけでもいい―…柘植さんはそう言っていました。そして私はその要求を実行しました。少し時間はかかりましたが―…柘植さんは履行して下さると信じています」
「―…」
自分でもなぜだか分からないけど、私はとても強気だった。
悠馬と別れた以上、私にはもう何も怖い物なんてない。
手荒なことはされたけれども、この件に関しては不思議と柘植さんを信じられる。
「―…わかっています」
小さく柘植さんは答えてくれた。
その言葉が聞ければ、もうここに柘植さんといる意味もない。
「では、失礼します」
立ち去ろうとしたけれども、
「待って、繭子さん」
「―…」
「あいつの事は抜きで、本当に僕とのことを前向きに考えてくれないか?いや、友達からでもいい」
柘植さんはまだ、私を引き留めようとしてくれる。
そんな事をしてもらう価値なんてない女なのに―…買い被り過ぎている。
私は首を振り、
「もう、会うつもりはありません」
「断言しないで欲しい」
「私の気持ちは変わりません」
そうはっきりと伝えた。
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