50人が本棚に入れています
本棚に追加
「君が―…ちゃんとタクシーを拾うのをここで見送るよ……」
「―…」
柘植さんはベンチに座ったまま、公園を出て行く私を見ていたのかもしれない。
振り返らないまま柘植さんから離れたから、わからなかった。
ちょうど走ってきた空車のタクシーに手を挙げて、後部座席に乗り込む。
悠馬はまだ寝ているよね……
ホテルのベッドの上に一人残してきてしまった悠馬が気になる。
けれども、私は携帯電話を取り出して電源をオフにした。
自分のマンションに帰り着いたのは、日が昇る二時間ほど前。
まだまだ暗い時間。
暗い部屋に帰って、電気もつけないまま、
「……っ……う……」
リビングの床に崩れた。
やっと出てきてくれた涙は、とめどなく溢れていく。
もうメイクが落ちたって構わない。
せめて、ここでは思い切り泣いたっていいでしょ……?
最初のコメントを投稿しよう!