29、ベツ離

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「君が―…ちゃんとタクシーを拾うのをここで見送るよ……」 「―…」 柘植さんはベンチに座ったまま、公園を出て行く私を見ていたのかもしれない。 振り返らないまま柘植さんから離れたから、わからなかった。 ちょうど走ってきた空車のタクシーに手を挙げて、後部座席に乗り込む。 悠馬はまだ寝ているよね…… ホテルのベッドの上に一人残してきてしまった悠馬が気になる。 けれども、私は携帯電話を取り出して電源をオフにした。 自分のマンションに帰り着いたのは、日が昇る二時間ほど前。 まだまだ暗い時間。 暗い部屋に帰って、電気もつけないまま、 「……っ……う……」 リビングの床に崩れた。 やっと出てきてくれた涙は、とめどなく溢れていく。 もうメイクが落ちたって構わない。 せめて、ここでは思い切り泣いたっていいでしょ……?
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