50人が本棚に入れています
本棚に追加
ホームルームも終えて生徒達が下校した後、ひとりポツンと教室に残る。
寂しいとか名残惜しいとか、そんな事よりも教師としてもう限界なんだと思った。
そして悠馬とは、
あの夜以来、会っていないし、連絡も取っていない。
私はずっと携帯をオフにしていて、とりあえず契約したウィークリーマンションに寝泊まりしていた。
今まで住んでいたマンションでの荷物はそこに移動させて、いらない物は捨てて、
蛻の空状態だけど、今月いっぱいまでの契約になっている。
そこまで行動している理由は、もし悠馬から連絡が来たり、会いに来てくれたりしたら、それを拒める百%の自信がない。0.01%でも気持ちが揺らぐ可能性があるなら、方法を絶たなければいけない。
悠馬は今、私のことをどう思っているのだろう。
仕事が忙しくて、そんな事を考える暇もなくて、まだ私の決断を知らないでいる可能性も十分にある。
と、
「本当に辞めるんですね。それってどんな決意なんですか?」
声がしてハッとした。
「深見さん……」
「あの時、来週いっぱいとか言ってたけどこっちには何も報告してもらってない。ただ、あんたが辞めるって噂を聞いたからさ、猶予をあげている状態なんだけど」
深見さんは教室に入ってくると、扉を強く閉めた。
確かに、ちゃんと深見さんに伝えられていないまま。何もかも綺麗に整える為には、深見さんにも話をしないといけない。
「私は―…私も彼の活躍を祈ってる。あなた達と同じ様に」
「なに……その言い方。特別な存在からあたし達みたいな立場にランクが下がったみたいな言い方、むかつく」
「ごめんなさい―…でも、私なりのけじめはつけてきました。もう彼と会うことはありません」
「ふーん……」
最初のコメントを投稿しよう!