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パンプスに履き替えて外に出た所で、
「椎原先生」
呼び止められた。
振り向くと、
「椎原先生、よかった~間に合って……っ」
息を切らして駆け寄ってきてくれたのは岬先生。
「職員室に戻ったら、もう椎原先生が帰られたって聞いたので走ってきちゃいましたよ~…」
「あの、何か忘れ物でもしていましたか……?」
「違います違います。私が渡したい物があったので」
「……?」
「椎原先生とは同じ歳で、ずっと一緒に働いてきた仲じゃないですか。突然、辞められるなんて聞いてびっくりして―…」
「すみません……中途半端な時期に……」
「いえいえ、こんな時期に急にだなんて椎原先生にも色々と事情があるんでしょうし。ただ、せめて、今までの感謝の気持ちは伝えたいなって思って手紙を書いてきたんです」
「ありがとう……ございます……」
「椎原先生には心の支えにもなってもらっていたので」
「そ、そんな……」
「謙遜しないでください。じゃあ、これ」
そう言うと岬先生は私に手紙をくれて、
「絶対に読んでくださいね」
にこやかな笑顔を浮かべて、また校舎へと戻っていった。
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