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いったい、何を売っているんだろう。 興味をひかれて、一番ちかい露天をのぞいてみた。 露天といっても、地下の町なので、道端に布を敷き、商品が並んでいるだけだ。 売り主らしきおじさんが、ちらっと俺をみて驚いた表情をする。 「お……噂の王子様じゃないか。何かお探しで?」 へ……王子様? なんだ、噂のって! おもわず山河をみたが、やつもきょとんとしている。 やっぱり、服か。服のせいか? 上着は着てないけど、一番黒に近いズボンは紫紺色で、光の加減で金色に輝く不思議な布地だ。裾や生地の切り替え部分に、小さな真珠っぽい宝石までついている。 これで一般人ですと言っても、信じてもらえないだろう、そんな上等な服。 白いシャツも襟高で、光沢があってなめらかすぎる。 俺だけこんな服なのは……母さんの要望なので逆らえない。 山河は、ごく普通の生なりの服だ。 露天のおじさんが待っているので、俺は商品に視線をもどす。 「…みてもいい?」 「どうぞどうぞ!」 そういえば、こっちの金って……魔法のつまった石だっけ。 宿屋のおばあさんにお駄賃?でもらった小さな石が、一応ある。 許可がおりたので、並んでいる商品を眺める。
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