ちいさな天才ハイジャンパー

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 ハイジャンパーには、身長の高いやつが多い。  どんなひとでも、じぶんの身長プラス三十センチの高さを飛べるという。  だからどんどん高くなっていくバーを越えるには、身長が要る。  ちびが記録を残すには、ちっとばかし難しい競技だった。 「おまえ、スランプなんだって?」  大会を目前に控えた、とある部活の最中のこと。  体育館のとなりにある水道で頭から水をかぶっているところに、声がかけられた。  身震いをして水気を飛ばし、ふっと顔をあげる。 「今の、お前が言ったのか?」  校舎の二階の窓から、身を乗り出しているやつがいた。にま、という笑い顔でおれを見下ろす男子生徒がいる。  二年かよ、ばかにしやがって。 「そう。何度もバーを転がしてるの、見てた。調子悪いんだろ?」 「かもな、すげー頭いてぇわ、たった今痛くなったわ」 「いやいや、そういう体調的な意味じゃなくてな」  二年のくせに生意気なやつ。と思っていたら、やつはとんでもないことを言い出した。 「部活辞める気ならさ、うちこない?」 「は?」 「うち。演劇部」 「はあ!?」  おれに演劇の心得はない。それどころか高校三年にして国語レベルもどえらいことになっているこのおれに、なんで演劇をすすめるんだ!?
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