ちいさな天才ハイジャンパー

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 二メートル二十三センチの高校男子最高記録。  百九十センチを跳ぶなんて当たり前、二メートル越えが決勝のボーダーライン。女子だって、百九十センチ跳んで優勝する。  でもおれには、二メートルが遠い。  百六十にも満たない身長で、プラス四十センチはけっこうきつい。ましてや二メートル二十三センチとなったら……身長プラス六十センチ。  ふつうにやってちゃまず越えられない高さだ。いや、もはや壁だろ。  この壁を前にしてみんなはおれに「もっと身長があれば越えられたかもしれないねぇ」としみじみ言う。本気で「これ以上は無理」だと思ってるってことだろ。  みんなはもうおれの限界を見た気でいるんだ。  おれも正直、それを否定できなくなってきてる。  最近、本当にぜんぜん跳べないんだ。スランプなんて一言で片付けてほしくない。本気で、これが限界なんじゃないかと思っちまうくらい、跳べない。しまいには、今まで跳べてた高さも、跳べなくなってきた。  そんなことが、もう何ヵ月も続いてる。  だから、いっそきれいに辞めてしまってもいいかなと思っていた。このまま活動していても、たぶんだらだら続けてしまうだけだ。実はすでに顧問にも言ってあったりする。  まだマネージャーにもメンバーにも言ってなかったんだけど。  丸二年間見てただけあって、二階からおれを見下ろすストーカー野郎は耳が早い。さすがストーカーだ。 「見に来るだけでもいいから、来てみない?」  そいつがいる教室のほうを指差されて、おれは答える言葉を見つけられなかった。 「第二多目的室で待ってる」
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