ちいさな天才ハイジャンパー

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 結局、おれは陸上部から演劇部に活動場所を変えた。顧問には「今さら」みたいな顔をされたけど、ちゃんと伝えに行った。  で、そこから約二週間の地獄がはじまるわけだ。  夏のコンクールまで時間がない。おれに割り振られた役は他のメンバーが掛け持ちでやろうとしていたキャラクターだったから、さいわいにも台詞が少ない。  でも国語レベルが小学生でストップしてるおれは台本を読むところから詰まった。文字の上を目が滑る滑る。しかも漢字が読めない、言い回しが理解できない、先に進まない。  結果、おれをスカウトした部長であるところのストーカー野郎は最近高血圧気味だ。もちろんおれが怒らせるからだ。だって難しくて読めないんだもん、しょーがなくね? 「『そこのタケシさんよ、ちょいとまっておくんな』」 「まてまてまて! お前が待て! タケシ誰!? それは『タケシ』じゃない、『武士』だ! ぶ、し!」 「えっ? ひとの名前かと思った」 「頼むから読み仮名をふれ!」 「ふったって!」 「ふれてねーから言ってるんだけど! ちょっと見せてみ」  最初の三日くらいはずっとこんなんだった。  最終的に焦れた部長野郎が読み仮名ふってくれた。これはマジで申し訳ない。
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