第1章

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 私は作戦を終えて全裸で彼のベッドの中で待機していた。三十路を過ぎれば女にだって性欲はあるし度胸だってあるのだ。必ずこのたまりたまった欲求を発散させて彼との関係も破産させてやると決めている。  作戦の内容はこうだ。携帯電話で鶴の間の客を演じながら注文し、エレベーターで商品をチェックしながら彼の携帯電話を差し込むというスマートな方法だ。これで彼はこちらに戻って来なければならないとわかるだろう。  部屋の扉の音がすっと開く。ようやく彼のお出ましだ。なんといって謝ってくるだろうか。そして私の姿を見たらなんといって驚くだろうか。彼の驚く姿が目に浮かぶ。  しかし目の前に立っていたのは私の友人だった。 「あんた、裸で何してんの?」 「さつきこそ、何でここにいるの?」  私を支援してくれた友人が目の前にいる。意味がわからず私は裸のまま固まった。さしずめ今の私は冷凍マグロそのものだろう。 「あんたねー、勘違いしているようだから、いうけど、もっときちんと誘惑しなさい」 「え?」  私は意味がわからず固まった。 「彼氏からあんたががっつきすぎていて、どう攻めたらいいかわからないって苦情が来ているのよ。もうちょっと兎のように女の子らしくしてないと男も攻めづらいのよ」 「どういうこと?」 「あんたが威嚇しているように思っているらしいのよ。だから彼氏もやりたくてもできないわけ」  ……な、なるほど。
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