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「え? お前、自分の店を持つといっていたやないか。関東に出すんか?」
「いえ、それが……葬儀の花屋を目指すことにしたんです」彼は再び言葉を濁していった。「その話はまた今度、店に行った時にします。めぞん一刻、必ず店にあると思いますので、それじゃ失礼しますね。花の画像だけ先に送っておきますね」
……慌しいやつだな。
俺はそう思いながらも羨ましくも思った。こいつは自分の興味を持ったことは必ず実行するやつなのだ。酒も飲めない癖にリキュールボトルを30本以上買い、大学の友人にシェイカーでカクテルを振舞っていたのだ。
花屋の彼から送られてきた写真を見て驚愕する。
……おお、すげえ。
俺はその写真を見てその虜になった。前に見た花写真よりも格段にレベルが上がっている。こいつはまだ30代だ、まだまだ上を目指せるだろう。
……東京か、いいな。
俺も東京にいた頃の飲み屋を思い出す。あの頃は夢中で、何もかもがビデオの倍速のように動いていたような気がする。
それが今、休みを貰ってほっと吐息をついているのだ。自分自身の老いを感じずにはいられない。
「パパー、ご飯持って来たよ」
「お、ママか。ありがとう」
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