第1章

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「私も今、休憩に入ったから一緒に食べようね」  クアトロのまかないを二人で食べる、黄身の入っていないチャーハンだ。料理する際、卵の黄身だけを使って白身は捨てることが多い。味が薄くなるからだ。その白身を捨てずにとっておき、店で使えない野菜を調合してできたのがこのチャーハンなのだ。  素朴な味がして旨い。これも確か大吉が考えたメニューだったなと思い返す。 「美味しい? 食べられる?」 「ああ、旨いよ」  俺は残さずに全部食った後、御馳走様をした。働かずに食う飯は確かに旨い。  だが……働いた飯の方が100倍旨い。 「……なあ、ママ」 「どうしたの、パパ」 「本当の幸せっていうのは休むことさえ嫌いになることなんだな」 「いきなりどうしたの、パパ?」  俺は幸せになりすぎている、と感じた。休むことが悔しくてたまらないのだ、俺はまだ動ける、若い奴らに負けたくない、皆と一緒に駆け出したいと。  いつの間にか俺は、子供の時に仮病を使った幸せを失っていた。 「今日は出勤することにするよ。なあに、椅子に座りながらシェイカーを振ることだってできるんだ。俺は皆を楽しませたい」
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