第1章

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「あー気持ちいい」  俺はでこに載せたアイスノンに感謝しながら目を閉じた。風邪を引いているにも関わらず、快適に過ごせるのは文明の力に感謝しなければならない。風邪薬も飲んでいるので悪い症状はどこにも起きていない。  これを幸せといわず何というのだろうか。 「あー幸せだ。昼間からゴロゴロできるのは幸せだぁ」  嫁が下のフロアで働いているにも関わらずだ。  俺は自営業で飲み屋と飲食の店をやっており三階建てのビル一つを借りている。1階の飲食店を嫁に任せ俺は二階の飲み屋のマスターをしている。今いる三階のフロアは従業員の休憩所だ。飲み屋は俺とバイトの二人でやっているから、今日は休みになるだろう。 「パパ、だいじょうぶー?」下から嫁の声が聴こえる。 「ああ、だいじょうぶぞー」  俺は返事を返しながら空咳をした。もちろん演技だ。  風邪だけでは仕事を休む理由にならないが、俺は三日前、原付のタイヤに右足の小指を巻き込まれ骨折したのだ。その病院に通ったおかげで10年ぶりに風邪を引いたため、大事を取るという名目で休みを貰えたのだ。 「よし、今日は今までの休みを取り返すぞ」
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