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俺は押入れを再び確認する。どこにも漫画はなさそうだ。下のフロアに行って聞くわけにもいかない、嫁が怖いからだ。
……そうだ、娘に聞こう。
俺は福岡で一人暮らししている娘に連絡した。娘はこの漫画を全て読破しており、俺に嫌味のように内容を話してきていたのだ。
俺が電話をすると、娘はすぐに取った。
「どうしたの?」
「お前、俺のめぞん一刻の最終巻どこにやった?」
「え、知らないよ」娘は迷うように答えた。「それよりパパ、足骨折したんだって? ママから聞いたよ。フック船長みたいに片足切断しないといけないんでしょ」
「ちげーよ、小指だけだ」俺は娘に大げさに突っ込んだ。空気を読んでやらないとすぐにいじけてしまうからだ。「久しぶりの休日だから、漫画でも読もうと思ったわけ。ママには内緒ぞ」
「うんうん。それより聞いてよ。あたし、一次オーディションに受かったよ」
「ほんとかっ」
俺は嬉しさのあまり叫んだ。慌てて口元を抑える。
娘は歌手になりたいという夢があり、その専門学校に通っているのだ。オーディションは毎月のようにあるが、倍率が高く一次審査でも受かるのは難しいといっていた。
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