第1章

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 俺は再び漫画を探し始めた。押入れになければ本棚に紛れているかもしれない。本棚の方を探していると、一枚の写真がぽろりと落ちた。昔ここにいた料理人の大吉(だいきち)が映っていた。  ……ああ、これはテレビの宣伝で来た時に撮ったやつだ。  そこには彼だけでなく俺と一階の料理店のメンバーで映ったものだった。今でも働いているメンバーが映っているが、大吉だけは自分の店を出したのでここにはいない。  俺は彼のことを思い出し、彼もめぞん一刻が好きなことを思い出した。俺が知らない名場面をやすやすといってのけたのだ。あの時は絶望のあまり、解雇しようかと思ったが、それもいい思い出だ。  大吉はこの近くに店を出しているが、お互い忙しく話す暇がない。ちょうどいい機会だ、ちょっと電話してみよう。 「お疲れ様です、どうしました?」 「お前、俺のめぞん一刻の最終巻どこいったかしらんけ?」  俺が単刀直入に訊くと、彼は悩むような声を上げた。 「え、知らないですね。それよりも聞きましたよ、右腕と右足骨折して、半身不随になったって聞いたんですけど、大丈夫ですか?」
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