点滴

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点滴

 交通事故に遭い入院することになった。といっても、怪我は打撲程度だ。ただ、頭を打っているので異常が出ないか、検査と様子見を兼ねて一泊することになったのだ。  いくつかの検査はどれも大したものではなく、基本的にはベッドに横たわっているだけの状態だ。  その時に、隣の入院患者さんの様子がちらと見えた。  顔は見えないが、俺と同じようにベッドに横たわっている。その傍らに点滴の機材があるのが見えた。  ビニールパックに入った黄色い液体が、少しずつ滴り落ちる。その様子をぼんやりと見ていたら、あることに気がついた。  一定間隔で音もなく滴る薬液の中に、時折、緑色に見える雫が混ざっているのだ。  パックの中身はよく見る黄色の液体だし、機材の途中にある、薬液を中継させる部分。そこに溜まった薬液も上と同じ色だ。  でも、滴る瞬間、はっきりと緑に見える雫が確かにある。  溜まった薬液に混ざると黄色に馴染んでしまうけれど、俺の目には緑が映るのだ。  でも普通に考えて、同じビニールパックから色違いの液体が滴るなんてありえない。  軽くとはいえ頭を打っているから、意識がぼんやりしているのだろう。だから色を見間違えているのだ。  そう考え、俺は意識を休めるため、点滴から視線を逸らした。  その翌日。
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