0人が本棚に入れています
本棚に追加
「この島に来て、大体一月(ひとつき)が経つだろうか…」
一ヶ月ほど前に無人島に漂着した男は海を見ながら、ふと呟いた。その日も、男は食料調達の為、木の枝と浜辺に流れ着いた釣糸、釣り針で作った簡易的な釣具で釣りをしていた。しばらくすると魚がかかった手応えを感じ、木の枝を思いきり引っ張った。
しかし、釣れたのは魚ではなく、茶色の小瓶。男はがっくりとうなだれ、釣った小瓶を手に取りしげしげと見つめた。小瓶には何やら文字が書かれたラベルが貼られているが、一体どこの国の言葉なのであろうか。見た事もないその文字には、どこか人を惹き付ける不思議な魅力があるようだった。
男は少し小瓶を振った後、小瓶の蓋を開けてみた。すると小瓶の中から紫色の煙と共に悪魔が現れ、男に言った。
「余を眠りから覚ましたのはお前か?」
「は、はいそうですが…」
「そうか、永き眠りから覚ましてくれた礼だ。どんな願いも一つだけ叶えてやろう。言ってみるがいい」
「本当ですか!? ならお願いします、私をこの無人島から救って下さい!!」
「そんな願いでいいのか? 金持ちにでも永遠の命でも良いのだぞ」
「無人島でお金持ちになっても仕方がない。かと言ってこの環境で永遠の命なんて地獄だ。どうか、私をこの島から救って下さい」
「なんと欲のない奴だ。良かろう、ではその願い叶えてやろう」
悪魔が呪文を唱えると、男の身体は島の浜辺から別の場所へ瞬間移動した。
「確かに願いは叶えたぞ。ではさらばだ」
悪魔は別れの言葉を告げると、空へと消えていった。こうして見事、男の願いは叶えられ、無人島から別の無人島へと移動した男は、これまでと何ら変わらね日々を送るのだった。
最初のコメントを投稿しよう!