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待ち構えていた敵は、意外にも主人公達とあまり身長に差が無かった。
黒い衣で姿を隠した、「魔王」と呼ばれる敵は、たった一人で勇者達と戦った。
戦いの末、魔王は主人公の手によって倒された。
魔王を倒す。その目的を果たし、民の期待にも応えた。応えたはずだった。
それなのに、戦いの後に残ったのは、空しさ、切なさ、そして何より激しい自己嫌悪だった。
主人公は、魔王の羽織っていた、黒い衣を剥がした。
すると、主人公は目の前にいる人物に、目を疑った。
この髪も、顔も、手足も全て、主人公と瓜二つだったのだ。
その時、主人公はやっと気付いた。
自分が今まで殺して来たものは全て、「感情」であり、最後の最後に倒した魔王は、「自分」であったことを。
――そうなっては、遅いのだ。
… … …
「だから、ゲームは一日一時間って言ったでしょうが!!」
主人公の母親は、その言葉と同時に、主人公からゲーム機を奪い取った。
ゲーム機を奪われ、彼はこれが現実では無かったことに気付かされる。
目の前に、目には見えない温かい感情、存在があることを実感すると、主人公は涙を流した。
『だからね。目的や、誰かの為に頑張るのも大事だけど、貴方自身のことも、もっと大切にしてね』
ゲーム機の中の女性が、訴えかけるように言っていた。
(完)
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