とあるうららかな昼下がり

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パンツが飛んでいた。 教室のど真ん中で、風もないのにピヨピヨとパンツが飛んでいた。少し不思議な光景だったが、騒ぎ出す人もいないしパンツが飛んじゃ駄目という法律もないので、ありがたくその見事なラインにしばし見とれていた。いとおかし。 「あなた、私が見えるん?」 するとパンツと目が合い、そのパンツ。もとい、少女はそんなことを言ってきた。 「見えるか見えないかと言われれば見えるよ、でも君がこっちに振り向くと見えないよ」 「凄い。声も聞こえるんだ」 「話聞いてた? 振り向く必要はないんだよ。ムーミンなの? 違うでしょ。なら前を向くべきだよ」 「背中で語れってこと? 初対面で難しい要求するね。んしょ。ほい。それ。どうぞ。はい、私はなんといったでしょーか?」 「だから振り向く必要はないんだよ。目が前についているのは前を見る為なんだよ。振り返らずに前へ前へと進む為なんだよ」 少女が前向きゃパンツが後ろ。あんまり詳しくはないけどあの柄は××社の17年製コットン、縫い目が甘いから量産始めた後期のもので間違いない。淡い色合いと計算されたタータンチェックは安いながらも素材の持ち味を引き出── 「今私のパンツ見てなかった?」 「あれ? 君浮いてるね。なんか若干透けてるし、どしたの?」 「あ、聞いてくれます? 最初に聞かれるかと思ったけど興味ないのかと思った。でもその前にパンツ」 「幽霊なの? お化けの類?」 「あくまで すっとぼけるつもりですね。まあいいわ。幽霊でもお化けでもないけど似たようなものね。私はあの日の少年の心が生んだ純粋でピュアな夏の日の妖精」
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