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娘と夫が談笑している。
そもそも仲良しなほうだと思うけど、それにしても今日は話が弾んでいるようだ。
志田くんが夫だという種明かしがあるのも時間の問題だろう。
「お前、何をどこまで話したの?」
夫がネクタイを緩めながら呆れ顔をした。
「高校の文化祭のことと、志田くんがかっこよかった、ってことだけど?」
湯気のあがる味噌汁をテーブルに置く。
今日は珍しくカラシ蓮根も用意した。
「物事は正しく教えないと。
かっこよかったじゃない、今もかっこいいの」
水を飲もうとシンクに近づいた彼が、プリンカップに気付いた。
「あ、俺のもある?」
「あるよ。瓶だから口にプッチン出来ないけど」
笑いながら言うと、彼はあの頃よりシワの増えた目尻を下げた。
娘のクラスは「オカマ喫茶」をやることになったらしい。
男子生徒が女装で接客、女子生徒が調理担当だそうだ。
これからまた問題は起きるだろう。
けれど、問題にぶつかるその度に、よりよくするための知恵を出しあっていけば、きっと形は出来てくる。
そうやって全てのものが作り上げられてきたのだから。
直接手をさしのべることはできないけれど、頑張るあなたを応援してるよ。
そして、あなたが、みんなが、最高の笑顔になれますように、と。
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