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土曜日。
浜ノ樹警察署応接室にいる圭恵と、巴那。
向かい側に圭恵の父、相楽功二(サガラ コウジ)が座っている。
外は木枯しの吹く冷たい寒さだが、そこは湿度調整が行き届いている為適温を保っていた。
テーブルに置かれた緑茶を一口飲み、圭恵が話しだす。
「お父さん、招待状の事で何か分かった?」
「……天坂武留のもとに来た招待状の差出人は、
『神楽(カグラ)羅維納』
だそうだ。やはり被害者と面識はなくて、招待状はどこを探しても見つからなかった」
資料を見ながら、功二は答えた。前途の通り室内は適温なので、スーツを纏う功二が「寒い」とぼやくことはない。
だが客観的に功二を見ている圭恵と巴那にとっては、それなりに暑苦しく見える。厚着のし過ぎもかえって暑くなるからだ。
「あのぉ――…」
おずおずと、遠慮がちに巴那が手を挙げながら言った。
「巴那何か分かったの?」
圭恵は身を乗り出し、目を輝かせた。ずっと捜査は進展していないのだから、当然の反応と言える。
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