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不機嫌な口調でとある方向に首を向けた少女は、高瀬巴那(タカセ ハナ)。肩まである黒髪が印象的な、純和風系だ。彼女もまた、優奈の友人の一人である。
「え~何?」
巴那の視線の先にあったのは――
榊終(サカキ シュウ)の姿。
いつも一人で行動している不思議な人。片手に謎の黒い本、ブラウンの長髪は結わえられ、耳にはピアス。
とにかく怪しいオーラを放っており、何かと敬遠されている。
「あいつさあー、一体何の本読んでんだろね」
「あれカバーじゃないの?」
「まさかぁ」
終の席は、窓際一番後ろという、おいしい場所だ。そこを見ながら話している圭恵と巴那に向かって、今まで黙っていた友人の一人、伊澤万理乃(イザワ マリノ)が口を開いた。耳の下で二つに結った髪が、大人しい感じを出している。
「噂じゃ黒魔術の本らしいよ」
「万理乃~! 変な事言わないでよ~あたし素でビビッたんだけど~!」
四人の間に、一瞬、冷めた空気が流れる。それを一生懸命打ち消そうと、巴那は努めて明るい声で言った。
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