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時は経ち、授業の時間。
終の右斜め前の席に座っている優奈は、ほんの好奇心から後ろを振り返ってみた。
教師は黒板に向かって板書しているため、気付かれることはない。
終はどうやら授業に集中しているらしく、黒板とノートを交互に見て――つまり、黙々とノートを取っていた。
見た目が不良っぽく、怪しいオーラを放っているだけあって、優奈は終の真面目な態度にいい意味でのギャップを感じ取る。
圭恵達はきっと、誤解しているだけだろう。
終のことを偏見抜きに、見ていないから。
嫌な印象しか持てないのだ。
と思う優奈自身も、終と仲がいい訳ではないのだが。
前を見て、再び授業モードに入る優奈。
しかし優奈の関心は、どうしても終に向いてしまう。
家はどこなんだろう?
どうして、毎日同じ黒い本ばかり読んでいるんだろう?
そんな事ばかり考えていた。
優奈の興味関心――殆ど好奇心に近いが――は、専(もっぱ)ら終に向いている。
分からないから、知りたい。
ただ、そんな思い故の。
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