第4章 その距離に私は惑う

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「琴音、何を難しい顔してるの?」 母の声にハッと我に返り、視線を上げると、いつの間にか私の部屋の前に到着していた。 無意識でも階段を昇ることが出来るのかと我ながら驚いたものの、母に部屋へ入ってもらい、クローゼットの前に来てもらった。 「それで、何処に出掛けるの?」 「へ?」 「何処に行くかによっても、どんな服装がいいのか変わってくるわよ?」 「そっか、そうだよね……えっと、水族館に、行くの」 確かに、翔太くんと遊園地に行った時にはパンツスタイルを自分で選んでいた。前回の映画は座っているだけだからワンピース。 あれ、と気付く。 私、黒崎さんと出掛けるとなると頭が真っ白になって、どんな格好をしてもかわいいとは思ってもらえない気がして不安だけど、翔太くんの時は自分でサッと決めている。
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