第4章 その距離に私は惑う

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黒崎さんはとっても優しい人だと思う。 私が話すのを待ってくれるし、絶対に馬鹿にしたりしないのも分かってる。 ……クスッとは笑われるけど。 それは嫌な気分になるものではないし、恥ずかしいけど、黒崎さんの笑顔が見られるのは嬉しい。 「琴音、その人が好きだっていうその気持ち、大事にしなさい。琴音は琴音らしくいればいいのよ。じゃあ、お母さんはもう行くわね。琴音も早めに寝なさいね」 「あ、うん。ありがとう」 そう言って、母は最後にとびっきりの優しい笑顔を見せて、部屋から出て行った。 パタンとドアが閉まると、途端に静かな空間が出来上がる。 早鐘を打つように鳴る心臓は、2日後に迫ったその日を心待ちにしているのだろうか。 嫌な緊張ではなく、行きたくないのではなく。 落ち着かない気持ちは、それだけ黒崎さんを好きな証拠。 この気持ち、大事にしたい……。
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