第4章 その距離に私は惑う

24/107
前へ
/1014ページ
次へ
「お母さんは自分に自信は無いけど、お父さんがかわいいと言ってくれたら、その言葉を素直に受け取ることにしてるの。お母さんは他の誰でもないお父さんにそう思ってもらえさえすればいいから」 「お父さんにだけ?」 「そうよ。誰から見てもかわいいと思われなくてもいい。お父さんに思ってもらえばそれでいいでしょう? 琴音も、黒崎さんにかわいいと思ってもらえればいいんだから」 「そうかもしれないけど……その黒崎さんにかわいいと思ってもらえるかが不安なんだもん」 「大丈夫。琴音が黒崎さんを想ってかわいくなろうと努力していることは伝わると思うし、そういうところがいいと思ってもらえるんじゃないかしら」 努力……は、確かにしてるつもりだけど、それが伝わるだけでかわいいと思ってもらえるのかな。 「……でも」 「自分のためにかわいくなろうとしている女の子を認めてくれない男の人は、やめておきなさい」 「え」 まさか突然やめるように言われるとは思わず、一瞬にして身体が固まる。
/1014ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5744人が本棚に入れています
本棚に追加