第4章 その距離に私は惑う

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「そういうところをちゃんと見てくれない人は相手の良いところにも気付けないだろうし、第一余裕が無さすぎて琴音を任せられないわ」 「ま、待って。でも、やめるなんて」 「あら、黒崎さんは心に余裕のある人なんじゃないの?」 そう言われて、いろんな黒崎さんを思い起こしてみる。 どんな場面でも落ち着いてリードしてくれ、優しい目で私を見てくれる黒崎さん。 眼鏡の奥にある切れ長の瞳は一見冷淡に見えるけど、微笑むと一瞬にして柔らかく温かい眼差しへと変わる。 そんな黒崎さんを見ると『ああ、私はこういう黒崎さんが好きなんだな』と実感する。 端正な顔立ちだから好きなんじゃなくて、黒崎さんの内面に惹かれていて、その上でその外見に落とされる。 落ち着いた雰囲気も包まれているような気になって心地良く感じてしまう。もちろん私の勝手な思いだけど。 「黒崎さんは大人でいつも余裕があって、私が隣にいてもいいのか不安になるくらい、素敵な人」
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