第4章 その距離に私は惑う

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「そう、それなら大丈夫。それと、一緒にいることに誰の許可も必要ないわよ。その人が隣にいていいと言ってくれたら、胸を張って隣にいればいいのよ」 「……そういうものなのかな」 「そうよ。ほら、時間は大丈夫? せっかくなんだから、思いっきりドキドキして、思いっきり楽しんできなさい」 「うん、ありがとう」 そう言われて、そのドキドキに殺されそうなほどですが、とは言えなかった。 でも、思いっきり楽しむというのは大事かなと思う。映画の時も思ったけど、今日が最後かもしれないのだから。 そう思った途端、急に胸が締め付けられたようにギュッと痛んだ。 ……最後だなんて、嫌だ。 でも、もし黒崎さんが次の約束をしてくれなかったら、私からは何も言い出せないだろう。つまりは、今日で会う予定は途絶えてしまう。 どうしたらいいのだろうと思いながらも、出掛ける最終チェックをして「いってきます」と声をかけて家を出た。
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