第4章 その距離に私は惑う

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心の中がもやもやとしながらも、足を動かせばあっという間に最寄り駅に着いてしまった。 まだ約束の時間まで30分は優にある。 駅前を見回して黒崎さんがいないことを確認して、ホッと胸を撫で下ろした。 そして、改札が見えるような位置に移動して、ぼんやりとしながら待った。 久しぶりに会えることへの緊張と興奮、今日という日がどんな1日になるのかという期待と不安、今日以降は黒崎さんとは会えなくなるのではないかという煩慮で頭の中はぐちゃぐちゃだ。 はふっと中途半端な溜息を零していると、背後に車が止まる気配がした。 誰かのお迎えだろうかと何気なく其方の方を振り向き、ピシッと身体が硬直した。 駅のロータリーに一台のシルバーの車が停まっていて、どう見てもそこから黒崎さんが降りてきて此方に向かっている。 「藤原さん、おはよう。お待たせ」 「おおお、おはようございます……!」
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