第4章 その距離に私は惑う

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「はい、どうぞ」 そう言って、黒崎さんは自然な振る舞いで助手席のドアを開けてくれた。 そんな大人っぽくて紳士な姿にドキッと心臓が跳ね、それでなくても煩い鼓動が最早制御不能になっている。 「あ、ありがとうございます」 乗ろうとして足が竦んでいることに気付き、ギュッとスカートを掴んでみる。 「大丈夫? たぶん、車内はそれほど汚れてないと思うんだけど」 「え?! いえ、そんな、違いますっ。そうじゃなくて……緊張、してしまって……」 尻すぼみになっていく私の言葉を聞いて、黒崎さんはクスッと小さく笑い、私の隣に来て背中に手を添えた。 ブラウスとカーディガンを通してもその手の温もりが分かり、意識してしまうと手が大きいことまで感じて、身体が燃えるように熱くなる。 顔だって、きっと真っ赤になっているに違いない。今は朝で当然明るいため、そんな私の様子は丸分かりだ。
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