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「はい、どうぞ」
そう言って、黒崎さんは自然な振る舞いで助手席のドアを開けてくれた。
そんな大人っぽくて紳士な姿にドキッと心臓が跳ね、それでなくても煩い鼓動が最早制御不能になっている。
「あ、ありがとうございます」
乗ろうとして足が竦んでいることに気付き、ギュッとスカートを掴んでみる。
「大丈夫? たぶん、車内はそれほど汚れてないと思うんだけど」
「え?! いえ、そんな、違いますっ。そうじゃなくて……緊張、してしまって……」
尻すぼみになっていく私の言葉を聞いて、黒崎さんはクスッと小さく笑い、私の隣に来て背中に手を添えた。
ブラウスとカーディガンを通してもその手の温もりが分かり、意識してしまうと手が大きいことまで感じて、身体が燃えるように熱くなる。
顔だって、きっと真っ赤になっているに違いない。今は朝で当然明るいため、そんな私の様子は丸分かりだ。
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