第4章 その距離に私は惑う

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あまりキョロキョロするのは失礼だと思いつつも、意識は車内のあちらこちらにいってしまう。 私は車に全く詳しくないから、これがなんという車なのかは分からない。でも、多分ハイクラスの車じゃないだろうか。 我が家でも父が車を所有しているけど、なんていうかもっと庶民向けだと思う。それでも決して安いものではないのだから、黒崎さんの車が違うのだろう。 ……黒崎さんって建築関係の仕事をしてるって言ってたけど、本当にただの社員さんなのかな。 あからさまにブランド物を身につけているということはない。もちろん、私が知らないから見極められないということはあるかもしれないけど。 私はまだまだ黒崎さんのことを知らない。 少しずつ知っていけたらいいな。 私に聞き出す力があるとは思えないけど、それでもいろんなことを知りたい……。 そんなことを考えているうちに黒崎さんも運転席に乗り込み、ハンドルに手を置いていた。
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