第4章 その距離に私は惑う

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「出発するけど、大丈夫?」 「は、はいっ」 黒崎さんは私の返事に微笑んで頷くと、静かに車を発進させた。 走り出しても殆ど音はなくて、音楽もかかっていないためとても静かだ。 静かすぎて、私の早い鼓動が聞こえているのではないかと不安になる。 「何か音楽でも聴く?」 「え? あ、はい……」 「好きなアーティストとか好きなジャンルはある?」 「えっと、特に無い、です」 本当に本ばかりが好きで、私はあまりテレビを観ない。音楽も聴かない。 ……つまらない女だよね。もっと、勉強しておけばよかった。
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