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「それなら僕の気に入ってるものでもかけようか? それとも何もかけない方がいい?」
「い、いえ! 黒崎さんのお好きな音楽をかけてください。本当に私は何でもいいので……」
それに、黒崎さんの好みが分かるチャンスだ。
それから、黒崎さんは返事をして、オーディオを操作して音楽を流してくれた。
それは静かな洋楽で、アコースティックギターとボーカルだけというシンプルな曲。
「少し昔の人なんだけど、落ち着いた曲調が気に入ってるんだ。藤原さんも賑やかな曲より、こういう音楽の方が落ち着くかなと思って」
「はい! すごく、素敵な声の人ですね」
曲が素敵なだけでなく、黒崎さんのことが少しだけ知ることができた気がして、嬉しくてテンションが上がってしまい、その勢いで思いっきり黒崎さんの方へ顔を向けてしまった。
そこには真っ直ぐ前を見て運転している黒崎さんがいて……当たり前なんだけど。
でも、その綺麗な横顔も、ハンドルに伸びている思ったよりも逞しい腕も、今までも感じていた大人の男性だという部分がますます際立っていた。
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