第4章 その距離に私は惑う

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ゆったりとした音楽の中に、私の心臓だけが場違いのように暴れていて、その音楽を乱してしまっているようだ。 せっかく私も落ち着けるようにと曲を選んでくれたのに、これでは意味がない。 この光景はダメだ。見てはいけなかった。 でも、かっこよくて、ずっと見ていたい、目に焼き付けておきたいという思いもある。 ほんと、私の中って矛盾している。 これ以上見ていると死んでしまうと感じ、慌てて反対を向いて窓の外に視線を移した。 平日ということもあって、道路は比較的空いている。 天気も良くて、緊張はするけど、その分アドレナリンが放出されているのか気分はどんどん上がっているような気がする。 「少し距離があるし、何か飲み物でも買っておく?」 「いいい、いえ。そんな、大丈夫です」 「……僕がコーヒーを買いたいから、コンビニあったら寄ってもいい?」 「あ、はい!」
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