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「くそ、俺はまだ死ぬわけには……ッ!」
何か、色鮮やかなものが視界を掠めた。咄嗟に視線を向ければ、色とりどりの羽を持った鳥らしきものが、俺が落ちてきた空に向かって飛翔していた。
美しい鳥の後ろ姿と、燦々と輝く太陽が重なる。
目映い光の奔流に目が眩む。異世界入りした時とは反対に視界が白で満たされ――
ふわり、と。
浮遊感が全身を包むと同時に、意識がどこか高くへと掬われる奇妙な感覚。
「――やれやれ。俺たちのご主人様は、世話がかかるな」
急速に閉ざされていく意識の中、聞き覚えのない声が聞こえる。
その声は優しく、どこか懐かしくて――懐かしい?
聞き覚えがないのに……?
僅かな疑問を感じるが消え行く意識は止められず、俺はそのまま意識を失った。
「……おかえり」
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